非公式な祭日(前編)

 「特殊祭」、「本の返却祭」、「女性祭」、「ユリ祭」とは?北アフリカから東ヨーロッパ、イランからクルディスタンまで。伝統が忘れ去られる前に色々な系列のユダヤ人達の祭日を調査してみたらユダヤ民族はお祭り好きなのが判明した。

1.コーアマン・アル・スファリーム(本の返却祭)

 ヘシュバンの月4日目チュニジアとジェルバ

 スーコット祭最終日のトーラー伝授の日に、聖書を抱えて踊りながら笑顔と飴玉が飛ぶ中を子供達が走り回る声の景色は皆知っている。トーラー伝授の翌日に起きる倦怠感も皆知っている。チュニジアとジェルバ出身のユダヤ人以外の皆である。何故なら彼らのお祭りはまだ終わっていないからだ。聖書を抱えて踊った後に、この会衆は聖書を15日後のヘシュバンの月の4日目まで神の箱の外に置いているからだ。

 聖書を戻さないのはエルサレムへの巡礼者達のことを考慮しいるからで、彼らが全員安全に帰宅するまで聖書を外に置いておく。そして15日後に「聖書の神の箱返却祭」が始まる。幸運にも全く祭日が無い月であるヘシュバンの月にこの日がやってくるので、この祭日をお祝いする会衆にとっては少し楽しみが増えることとなる。

 聖書は神の箱の外で机か特別なベンチの上に2週間放置され、手作りの刺繍で色鮮やかな布で包まれている。聖書を神の箱へ戻す時には歌を歌いながらの儀式で子供達が「イムロッフ」の掛け声をかけ、大人達が同じように大きな喜びを持って掛け声をかける。この儀式では聖書の言葉、道徳、踊り、楽器、誓約と一般会衆への寄付が要求される。他の祭日と同様に、この儀式の最後に盛大な食事会が催される。

 「本の返却祭」は会衆の生活に喜びをもたらす。聖書と人間との接触が、人生の特別なテンポに注意を払うようになっている。聖書が人間と家族との関係を作り、会衆内での相互の助け合いや人間関係を作ってくれているからだ。チュニジアとジェルバ系ユダヤ人達は聖書の返却だけを待っているのではなく、祝福され実のい多い年となるように「雨ごいの祈り」をスーコット祭の聖会(8日目)ではなく、聖書の返却祭から祈るようになっている。

 何故ならば第二神殿時代はスーコット祭を祝う為にエルサレムへ巡礼者がやってきた。お祭りが終わると遠方に住んでいるユダヤ人達が帰宅途中で雨に合わず、道が泥で危険にならないようにするためであった。その為に全員が帰宅するまで雨ごいの祈りも待つ習慣があったのだ。雨ごいの祈りと聖書返却の待機期間は、聖書と人間とを同様に取り扱うために行っていた。人は家を離れて2週間後に帰宅する、このように聖書も家から出て2週間後に戻るという訳だ。

 全員がエルサレムに巡礼しに来た訳ではないが、皆が帰宅するまで全員雨ごいの祈りを待つ。この特殊な伝統でチュニジアとジェルバのユダヤ人達は他人への気遣い、相互の助け合いや考慮というものを教えてくれる。ところでこの特別な日、ヘシュバンの月4日目に最初の雨が良く降るのも事実だ。


2.ハシーガッド

 ヘシュバンの月29日目、エチオピア

 ヨム・キプールから50日目に、エチオピア系ユダヤ人達はハシガッド祭をお祝いする。断食、清浄と新生の日であり、神から許しを請い、神との契約の再開を願い、エルサレムへ上ることを熱望する。このお祭りの習慣はシナイ山での話と、エズラとネヘミヤの時代に行われた律法の再確認の話から影響を受けた。このお祭りはヨム・キプールの個人的な反省に追加した形で全会衆の為の段階を表しており、ノアの箱舟の話である大洪水はヘシュバンの月に始まったと言われ、その大洪水の世代の罪を償うためのお祭りとされている。大洪水の世代の熱望とは人生の成功で全てに勝利することであり、それによって気が狂い、自分の目的と夢を達成するためには他人を何でも利用するという、とても恐ろしい気持ちや思いを持たせることとなった。

 このような文化が人間を破壊に導き、最後には相互の戦いにまで及んでしまった。聖書には次のような言葉で記されている「地は暴虐に満ちた」。このように大洪水の世代は聖書の中心的なアイデアである、「他人を自分のように愛しなさい」という言葉を濁してしまい、「他人が自分のよう」にではなくなってしまったのだ。

 大洪水が全てを消し去った。大洪水の前にこの世は狭苦しい所であったが、全世界から救われたのは小さい箱舟に乗っていたノアと息子達のセム、ハムとヤペテ達であった。彼らは共に生きていくことを学んだために大洪水から救われた。

 ハシガッド祭がヨム・キプールから50日後にある。エチオピア系ユダヤ人会衆では一つの基礎価値観があり、それは平等という価値観である。神の前では全てが平等であり、「あなた方」や「我々」という概念もない。全ての人間、ユダヤ人でも異邦人でも神には全員が平等であるという事。誰もが重要であり、皆が神の一部であるという事である。

 これがハシガッド祭の目的の一つであり、人間同士の和解、相互間のわだかまりの除去、人間や居住区間の障害物の撤去などである。手中にある少しの物でも幸せになることが可能で、皆今でもノアの箱舟の中で生きているのだという事を意味している。

 エチオピアではお祭りの数十日前から準備が始まり、遠い村に住んでいるユダヤ人達はハシガッド祭がお祝いされる山の近くに住んでいるユダヤ人達の村へ集合して来た。ハシガッド祭自身は断食の日であり、皆早朝に起きて川で沐浴してから祭日用の服を着た。祭司達は聖書を先頭に掲げて歌いながら山に登り、女性は歓喜の声を挙げる。山に登る人達の一部は背中や頭上に石を乗せ、神に対する敬意や謙遜を表し、神から許しを請う意味を表していた。

 ユダヤ人を一つにする町エルサレムへ戻ることを祈り、相互の愛、慈悲と理解を高める。ヨム・キプールでも神の許しを請い、改心し、個々に神の前に反省する。その50日後にハシガッド祭でまた改心するが、ここでは全会衆の反省に専念し、相互の依存、関係性や信頼を強化する。

 これは個人が他人に謙遜となることである。一緒に生きることを学び、他人の目でこの世界を見ることを学ぶ。しかしそれ以上に現実を救いの観点から見ることを学び、破壊や怒りで見ることをしないことである。ハシガッド祭では自分達は一人ではなく、他人がいなければ自分も存在できないという理解を意識する。人間が他人に謙遜と平等で対処し、特に相互の信頼関係や良いことに目を向けることを専念すれば、相互の未来に希望が生まれるであろう。


*次回に続く

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