神のパンのレシピ:アメリカのスーパーで販売されている人気商品

 リロケーションでノースカロライナに2年間駐在し、アメリカの食料事情を知ることとなったが、特にスーパーの棚に並びきれない有り余る豊かさには驚いた。特にパンの棚は顕著で、理解できない数の種類のパンが置いてあり、お互いに似ているのに似ないように努力しているのが分かる。

 そんな中で最も目についたパンは、Food For Life社のパンで、とても不思議な名前の「エゼキエル4:9」という名前のパンを販売している。殆どのスーパーでこのパンを見たので、これは多分エゼキエル書の事だとピンときて、このアメリカの麦パンが本当に我々の良き預言者と関係があるのか調べてみた。

 パンの名前となっている聖書の個所を調べてみると、エゼキエル書の4章9節には、関連性なんて簡単なものだけではなく、詳細なパンのレシピが載っている箇所であった。聖書全体を見ても唯一のレシピで、神が記した人類史上唯一のレシピでもある。「あなたはまた小麦、大麦、豆、レンズ豆、あわ、はだか麦を取って、一つの器に入れ、これでパンを造り、あなたが横になって寝る日の数、すなわち三百九十日の間これを食べなければならない」(エゼキエル書4:9)。

 これを読んで心が燃え、「エゼキエルのパン」の何が良いのかを調べる為にFood For Life社のHPにアクセスしてみた。それによると約2,600年前のエルサレムにいた預言者エゲキエルが焼いた聖書のレシピとほぼ同じパンであることが分かり、たった一つの材料であるあわ以外は大豆の種に変えてくれたのは消費者も喜んでくれることであろう。

 聖書のレシピに沿った本物のパンを焼くというアイデアは、1964年にマックス・トーレスという人物が、エゼキエル書を読んでいたらこの驚く箇所にぶつかり、創造的なベーキングとして彼の脳内に生み起こされた。トーレス氏は、サウスカリフォルニアのコロナという特殊な名前の町で、健康食品のお店でベーカリーを経営していた人である。

 神のインスピレーションのレシピであり、凄い預言者が書かされただけのレシピにも関わらず、彼はこのアイデアに奮い起こされた。全ての材料を入手して栽培し、量を変えながらあわを大豆と取り換え、そして最後に「エゼキエル4:9」パンを造ることに成功し、短時間で主に南部を中心としたアメリカ全土のパンと聖書の愛好家達にヒステリックな人気商品となった。

 パンと魚の奇跡のように、エゼキエルのパンの背景にキリスト教福音派の何らかの思惑が隠れているように思えるが、Food For Life社はトーレス家代々に引き継がれた会社で、老マックスの動機は食材的観点であって宗教的なものではないと強く否定している。その為にこの歴史的なパンは、ユダヤ教のコーシェル認定を問題無く受けることが可能となったのであろう。

 ここまでは良いことだ。志を遂げたパン屋がカリフォルニアの荒野で神のインスピレーションのパン・レシピをこの世に出す、しかしトーレス氏はちゃんと勉強しなかったようで、エゲキエルのパンの失望する話と聖書との関連性をちゃんと理解していなかったようだ。当時は第一神殿が破壊される前の話で、預言者は神に命令されて残酷な包囲網に対して心の準備をするように苦しい未来を民族に伝えに来ていたのである。

 神が預言者に準備するように命じたパンは、テベットの月10日目にエルサレムがバビロンによって包囲されるときに、どれだけ大変なものになるかの模範として使用されるものであった。小麦粉は希少なものとなり、腹をすかせたエルサレムの市民が家畜の飼料など、そこらで拾った材料で最悪なパンを焼くことを強要され、苦痛や疫病や病気にまでなってしまった。

 もしトーレス氏がそのまま聖書を読んでいたならば、将来包囲されるエルサレムには燃料や木炭が不足し、可哀想なエゼキエルはこの訳の分からない塊を人間の糞で焼くことになる。「あなたは大麦の菓子のようにしてこれを食べなさい。すなわち彼らの目の前でこれを人の糞で焼かなければならない」(エゼキエル書4:12)。模範としてこれを全て食べなければならないことで衝撃を受けた預言者が徹底的に抗議し、神も少し手加減してあげて動物の糞にしてあげた。「見よ、わたしは牛の糞をもって人の糞に換えることをあなたに許す」(エゼキエル書4:15)。

 ある意味トーレス氏が続きを読まなかったのは幸運なのかも知れない、というのは「エゼキエルのパン」の信憑性を追求するために何をしでかすか分からなかった。しかしこの54年間でアメリカでこんなに売れているのに、古代のエルサレムの観点からしても本当に不味いパンだったのか疑問に思ってしまう。

 答えはアメリカでは日常茶飯事の営業だ。インターネット上では熱烈な記事で一杯で、一部は金を受け取り、一部は金を受け取っていないように振舞い、こんな見出しで書いている。「何故エゼキエルのパンは最も健康的な食用パンなのか」又は「エゼキエルのパンに何故人は熱狂するのか」。皆が驚くのはパンが全く小麦粉を使用していないことで、特殊な栽培過程を経て粉砕された全有機種子を使用しており、その為に身体はビタミンやミネラルを良好に迅速に消化してくれる。

 つまり天からの賜物である、神のインスピレーションによるエルサレム・レシピのパンを味見するだけではなく、ナチュラルの物を食し、痩せて長生きする訳である。エゼキエルと彼のパートナー達は当時何を思っていたのであろうか興味深い。

 味はどうかと言うと、一部は人生で味わった最も美味しいパンだと評価しているが、Food For Life社の代表者達でさえも「ちょっと変わった味」のパンであると白状しており、トースターで少しケアーしてから食べる方が良いと推薦している。厳格なクリスチャンは食べようともせず、ネット上ではレシピの文脈は、クリスチャンの信者にとって全く魅力のある者ではないと情熱的に説明している説教者達を見つけることが出来る。

 もし包囲戦のエルサレムのパンを試食したいならば、昨日(12月25日、テベットの月10日目)から、アマゾンで「エゼキエル4:9」を12種類の味、レーズン、セサミ、アマ、チアシードなどが購入出来るようになった。ここ数年でFood For Life社は自社のレパートリーを増やし、パン以外にトルティーヤ、マフィンやコーンフレークスも販売している。このような食事事情があったならば、エルサレムは陥落していなかったことだろう。

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