2月中旬にイスラエルを巡礼していた韓国の新興キリスト教団からの国内感染が発覚後、3月初旬から日韓中+イタリアからの入国を拒否。
3/19~死者0人のうちから事実上のロックダウン。毎日のように刻々と変わる対日措置と国内措置について大使館からメールを受け取る。死亡者は0人だが感染者が数百人に増加。その後、ホロコーストの生き残りだった方が初の死亡者となる悲しいニュースが流れる。
3/25 17:00~スーパーと病院以外は自宅から100m以上の外出禁止など更に厳しいロックダウン、そして鎖国状態へ。街は警察や軍によっていつも以上に警備強化で物々しい雰囲気。いつもは可愛く元気な子供の声が溢れるエルサレムもひっそりと静まりかえる。
4/2で死者34人感染者6808人(人口900万人)。最初はコロナなんてインフルエンザくらいのものでしょ~とお気楽に考えていましたが、ウイルスの感染力や重症者の症状·ヨーロッパの惨状を距離的にも身近に感じることが多く、喘息持ちの私自身は1か月半以上一切外出していません。コメディカルへの感染拡大、元々大きな負担を担っていただいている医師の皆さんに辛い命の選別を強いること、普段助かるはずの疾患で命を落としてしまう患者がでること、国の宝である子供たちを支える周産期医療にまで影響が出てしまうことなどを考えると、一人一人ができることは「とにかく外出しないこと」に行き着くのだと思います。恐れていたことに保健省は普通病床を20%まで削減して80%をコロナ病床にしろとの要求をしはじめており、これにより癌や心臓など常にフル稼働している病棟にもしわ寄せが大きくでると予想されています。今、絶対に病気になれません。昨日まで受けていた治療が受けられなくなる方々はどうなってしまうのでしょうか。現時点で死者数は日本よりも少ないですが大変な危機感を感じます。イスラエルでも経済的打撃は大きく失業率は既に23%まで上昇。しかし、経済の心配よりもまずコロナを制圧しなければという優先事項がはっきりしているように感じます。だからこそ自己主張が強くわがままと言われるイスラエル人でさえも今は静かに政府に従っているのだと思います。それに応えるようにイスラエル政府は、まず具体的な数字で行動制限を取り決め、同時にオンラインでの失業補償の申請受付を開始し、今後は子供一人につき15000円の応援金を配布する案も打ち出されています。イスラエルの政治が万全というわけではありませんが、国民を守ろうとする姿勢は伝わってきますし納得感があるから従いやすいというのが私個人の感想です(一世帯につきマスク二枚とかイスラエルで言っちゃったら首相でさえ多分ゴルゴダの丘送りだろうな)。
また、パレスチナからの出稼ぎアラブ人労働者への配慮として4万5000人分の雇用確保を先月の時点で実施しています。ガザに対しては検査キットや防護衣を先週に送ったとのこと。それに対して「人工呼吸器もよこさないとユダヤ人600万人皆殺し」との要求がハマスからあったようですので、拒否した場合はまたいつものようにミサイルが飛んでくるかもしれません。単なる親切心ではなく暴動による治安悪化対策も兼ねている分を差し引いても、自国民でさえ苦しい状況の中でいかなる時も隣人への配慮と戦略を忘れず冷静に施策を実施しているスタイルは、もっと世界的に評価されてもいいのになと思う一つです(とりあえずイスラエルを悪者にしておけば丸く収まるという古い報道スタイルが未だに根強いので)。
数々の戦争や日常でのミサイルなど、平時があっという間に有事になることに慣れっこのタフなイスラエル人ですが、いつもならコミュニティで祈ったり抱き合ったして困難を乗り越えてきたのに今回は皆で寄り添い合うことができない、そのことが日本人には想像できないくらいのストレスのようです。そして、国内感染者数を増加させている要因に「超正統派ユダヤ教徒(ウルトラオーソドックズ)」の存在があるというのもイスラエルならでは。彼らは神と聖書が絶対でありネットも使わず情報に疎い上に政府や軍の言うことを全く聞かない頑な方が多く、いつも通りお祈りや集会や大規模な葬儀などをしていた結果、人口の10%しかいないのにも関わらずコロナの入院患者の50%はウルトラオーソドックスであり、しかも保健省大臣はその宗派のトップなのですが夫妻揃ってコロナ感染者だということが4/2に判明しちゃってもう大変!!というとんでもない状態に。なんていう皮肉なのだろうと。。。神がお与えになった罰であろうという市民からの呆れた声もあります。そんな大臣、なんと海外で亡くなったユダヤ教徒のご遺体をイスラエルに移送して埋葬する案を出しているそう。ユダヤ教徒は最後の審判で復活することが前提で死ぬので、火葬されては大変に困るのらしいです。感染症対策からすると検討の余地すらなくNGですし、こちらの案にもさぞ批判があるのではと思いきやさほど反対する人がいないとか。明日は我が身という心情と、何よりユダヤ人にとってイスラエルに土葬されることの意義が世俗派であっても大変に大きいのだろうとのこと。政治から死生観まで毎日が興味深い学びです。
深刻な伝染病の始まりはいつも静かで何気ないけれど、気づいたら取り返しがつかないところにきていて、しかもその時に人はいつも無用意だ、というカミュの「ペスト」の描写は正にその通りですね。感染者にも媒介者にもならないように、今はただひたすらじっと自宅で待つしかありません。震災時にも現地で実感しましたが、明日が当たり前に今日の続きとして存在するなんて保証はどこにもないのだと思い知らされます。