北から南まで:イスラエルの自然に花咲くラン旅行

 春の訪れを告げる多くの花の中にランがあり、イスラエルの自然は31種類の野生ランによって祝福されていることを多くの人達は知らない。主に熱帯地域に生息しているランは、その摂食方法と、受粉の為に昆虫を引き付ける様々な方法の観点から、最も複雑な植物であると考えられている。

 大きくカラフルな花の特殊な形状により、ランは園芸植物として特に人気がある。多くの国々ではランをグリーンハウスで栽培し、魅了ある花にはとても需要がある為に市場で取引され、世界中のラン愛好家や収集家がメンバーとなっている国際組合も幾つか存在する。メキシコ原産のランの一つであるVanilla planifoliaからは、バニラを製造している。

 数十種類ではあるが、野生ランは殆どが希少であり、アネモネ、ルピナスやイリスのような保護された花に対し、ランは密生していない。しかし「ランの道」と呼ぶ旅行コースが幾つかあり、今の時期にこれらの特殊な花と出会えるチャンスが大きい。

 それらのコースを幾つかまとめたが覚えていて欲しいのは、保護された花であり、一部は絶滅危惧種にも認定されている。摘んだり抜いたり、触れることも禁止されており、散策中や写真撮影中に踏みつけないように特に気を付けること。

◎北部

●ヒレル山:オルキス・アナトリカ、クゲヌマ・ランとリモドルム・アボーティヴム

 メロン山自然保護地区のヒレル山は、主に春の真っ最中に2週間だけ開花するシャクヤクのお陰で多くの人が訪れる。しかしこの山の開花は様々で、春先にはトレイルで最低でも9種類のランに出会える。ここでは主に濃いピンク色の花を持つオルキス・アナトリカと、白い花を持つクゲヌマ・ランが育生している。オルキス・ガリラエア、ネオディネア・トリデンタタ、アナカンプティス・パピリオナケア、アオスズラン、リモドルム・アボーティヴム、オルキス・イタリカ、プラタンテラ・ホルムボエイなどにも出会える。

 このコース(円周約4km)の開始地点は、ベイト・ジャン村付近である。駐車場に到着するには、Waseのナビアプリに「ヒレル山」と入力する。駐車場から東に向かって砂利道の緑色のトレイルが、ベイト・ジャン住民の個人所有地と林の間を抜けている。トレイルに沿って歩いていくと、道の左側に隠れている緑色と黒色のトレイルの交差点に到着する。左に曲がって黒色トレイルに入り、ヒレル山の斜面に沿って緩い坂道を上り始める。麓に沿って砂利道を左に曲がり、少し歩くと右に曲がって北側の斜面に向かう(シャクヤクの標識あり)。

 シャクヤクが開花する林では、リモドルム・アボーティヴムを探すことをお勧めする。葉の無い濃い花を付けた茎で、大きな紫色の花が付いている。リモドルムはイスラエルで唯一の腐生植物で、死んだ有機物を食べて光合成をおこなわない植物である。坂道を下ると最後に砂利道に到着し、黒色と青色トレイルの交差点に到着する。左に曲がって青色トレイルに入り、約2kmの道を行くと開始地点に戻って来る。

●カルメル山:オルキス・パンクツラータとオフリス

 カルメル山のトレイルでは、殆どのランの種類が見られ、特に希少なものもあり、花が金・茶色で茶色の斑点が付いているオルキス・パンクツラータがある。オルキス・パンクツラータを見るには、全長約5kmのトレイルがアロン駐車場とアガム駐車場間に走っている、オーレン川のトレイルを散策することをお勧めする。またこのトレイルにはアナカンプティス・パピリオナケア、ロングリップセラピア、オルキス・ガリラエア、オルキス・イタリカ、リモドルム・アボーティヴムとアナカンプティス・ピラミダリスなども開花している。

 トレイルに沿って様々な種類のオフリスに出会えるチャンスがあり、オフリス・アンビリカッタ、オフリス・フシフローラ、オフリス・ボルンムエレリ、オフリス・アピフェラやオフリス・ルテアなど。オフリス種のランの花はメスのハチのように見え、オスをおびき寄せるフェロモンを分泌し、花と交尾しようとすることで受粉するようになっている。

 デモン交差点付近のアロン駐車場から、アロン川に下る青色トレイルがある。約2km歩くとオーレン川の溜まり池になっているアロン谷に到着し、小川同士の衝突で火山凝灰岩層が形成された。アロン谷を緑色のトレイルに沿って北上し、アロン遺跡を通り抜けてアロン泉へ下っていく。年中水が湧いている泉からカルメル山で唯一の粉ひき小屋跡に到着する。

 そこからオーレン川に沿った赤色トレイルの緩い坂道を下っていく。自然保護協会によって修復された人工池に直ぐに到着し、その付近にアガム駐車場があってそこが終点となる。カルメル山では、ラキット駐車場とラキット遺跡間や、ケラフ川とガデル川でも様々なランと出会える。

●アフ・ビニヤミーナとラマット・ハナディーブ:アナカンティス・ラクシフローラとアナカンティス・サンクタ

 アフ・ビニヤミーナ自然保護地区は、高い水位の地下水と泉がある地域として特色づけられており、イスラエル全国の殆どの地域で絶滅した多くの種類の湿地帯生息地の存在を可能とさせている。春先にここで見られる希少な植物の中には、アナカンティス・ラクシフローラがあり、イスラエルで最も背の高いランであり、茎は約80㎝まで成長する。このような茎一本に、10~50個の紫色の花が付く。

 この自然保護地区では、他にロングリップセラピア種類のランも見られ、その花は外見は特異で色は茶色・紅色となっている。自然保護地区への到着するには、パルデス・ハナとアダ交差点の中間にある、652号線から西に向かっている砂利道を使う。アナカンティス・ラクシフローラは、ユーカリ林の近くにあり、道路からも確認することが出来る。しかし残念ながらこの場所は廃れており、農業や放牧行為によって時々被害を受け、毎年花の量が減ってきている。

 もしこの地域に来るならば、ラマット・ハナディーブにも立ち寄り、ハナディーブ公園の外にあるトレイルを散策するのも良い。そこでは春の終わり頃(4~5月)にアナカンティス・サンクタと出会えることが出来る。このランの名前は聖地で発見された為に、18世紀のスウェーデン人植物学者のカルロス・リニオスが名付けた。アナカンティス・サンクタの花は薄いピンク色で、全国の殆どのランとは対照的に、強い心地よい匂いを出す。

●ネゼルとメナラ山:オルキス・イタリカとオフリス・スフェゴデス

 ネゼル山は、上部ガリラヤ東部のラミーム山脈の一部であり、標高760mとなっている。ネゼル山自然保護地区は、886号線の両側に広がっているが、イスラエルで最大のランの密集地の一つは、キブツ・メナラの麓の森にある。ここでは11種類のランが観測されており、その中で最も突出しているのはオルキス・イタリカであり、特に希少と考えられており、花の形状と明るいピンク色の為に「裸の男のラン」とも呼ばれている。

 この自然保護地区ではオフリス・スフェゴデスの種類のランも開花しており、色は茶色だ。この自然保護地区を旅行するには、メナラ崖のケーブルカーへ到着し、そこから砂利道が出ている。オルキス・イタリカは、ツファットのハテゥヘレット谷パークでも見ることが出来る。

●アツモン山:オルキス・イスラエリティカ

 世界中でオルキス・イスラエリティカは、上部ガリラヤと南部レバノンでしか見られない。白色に紅色の斑点がある花が、一本の茎に10~30個開花する。この季節にこの花と出会えるチャンがあるのはアツモン山だ。

 全長約7kmのトレイルは、テル・ヨドファト国立公園の駐車場から始まる。駐車場からテルに向かって青色トレイルが昇っており、その後ヨドファト川に向かって降りていく。右に曲がって山頂への急な上り道が見えてくるまで砂利道を歩き、その周辺でオルキス・イスラエリティカを探す。

 山頂にはローマ時代の要塞遺跡が残っており、ハイファ湾からゴラン高原までの景色が見渡せる素晴らしい展望台がある。青色トレイルに沿って約500m歩いて行く。途中で右に曲がって赤色トレイルに入ると、山を回りながら駐車場に戻る短距離コースを行くか、左に曲がって青色トレイルに沿って降りてアベライム川の泉まで行き、その道に沿って約1km進んで右に曲がって赤色トレイルに入り、約2km歩くと駐車場に戻って来る。オルキス・イスラエリティカはクジーブ川(ゴーレン・パークとアビリム要塞間のトレイル)、バルアム森、サッサ山、トルアン山やアディール山でも見ることが出来る。

●フルシャット・タル:13種類のラン

 フルシャット・タル国立公園の湖から南東に、フェンスで囲まれている約100エーカーの土地がある。以前この場所には、水によって溶けた石灰岩が堆積してできたトラバーチンの地表が証明しているように、ダン川とスニール川の氾濫が頻繁に起きていた場所であった。この場所に13種類のランが生息しており、イスラエルでもここ以外では見ることが出来ない種類の多さだ。

 フルシャット・タルの「ラン自然保護地区」で見られるランの種類は、オフリス・アンビリカッタ、オフリス・ルテア、オフリス・フレイスケマニー、オフリス・スフェゴデス、オフリス・アピフェラ、オルキス・パンクツラータ、アナカンプティス・コリーナ、アナカンプティス・コリオフォーラ、オルキス・アナトリカ、アナカンプティス・パピリオナケア、アナカンプティス・ラクシフローラ、ロングリップセラピアとエピパクティス・ヴェラトリフォリアだ。この地域には自然保護の考慮でトレイルが作られておらず、フェンス越しにしか花を見ることが出来ない。

◎中央部

●ハタヤシーム山:イスラエルの最小ラン

 エルサレム山脈のハタヤシーム山山頂は標高795mで、春に咲く様々なランの種類が有名である。この場所には11種類のランがあり、最も多いのはオフリス・スフェゴデス、ネオティネア・トリデンタタ、アナカンプティス・パピリオナケアとアナカムティス・ピラミダリスだ。2年前にこの自然保護地区で、初めて希少で小さいネオティネア・マキュラタの種類が観測され、イスラエルで生息する最小のランと考えられている。

 健脚な人は山頂から全長約1.5kmのタヤシーム泉へ下る急な道を降りて行ける。黒色トレイルだ。雨が降った後には滑りやすいので、このトレイルを歩いてはいけない。このトレイルは、タヤシーム山頂の記念碑から始まっている。記念碑の後ろにある広場のイチゴノキから林に向かって道が降りており、約80m歩くと大きな水道管が走っており、それを通り越して高圧電線がある場所まで下りて行く。この場所からソレク川、エルサレム山脈南部、ヘブロン山脈や低地の丘の素晴らしい景色が見渡せる。

 展望台の麓に青色トレイルの砂利道がある。その道の向こう側に両手を使わないと降りられない急な崖がある。その後勾配は緩くなり、泉までテラスと林の中を歩いて行くのは楽になる。落差が大きいので(タヤシーム山から泉まで約150m)、タヤシーム泉の麓まで続いている赤色の砂利道に、拾ってくれる車を先回りさせることをお勧めする。

●エルサレム森のスギ・トレイル:オルキス・アナトリカ

 明るいピンク色のオルキス・アナトリカは、エルサレム山脈の「スギ・トレイル」でも見られ、1958年2月2日にイスラエルの初代首相ダビッド・ベングリオンが自身の手で植えた杉の木からこの名前で呼ばれている。トレイルは円周で全長4kmあり、オーストラリア・パークから始まっている。エルサレムのピルヘイ・ヘン通りから辿り着けることができ、舗装した道路が森の中へ下っている。この季節では、チューリッパ・アゲネンシスが咲いているのも見られる。

●ネス・ツィヨナの海砂岩の丘:アナカンプティス・パピリオナケア

 ネス・ツィヨナに接する海砂岩の丘は、主にイリス・アトロプルプレアで有名な場所であるが、他にも多くの花が咲いており何種類かのランもある。その中に通常ピンク色の花をしたアナカンプティス・パピリオナケアがあるが、紅色、紫、珍しい白色の花なども存在している。アナカンプティス・パピリオナケアは詐欺ランとも呼ばれており、受粉の代わりに餌を受けることに虫が慣れているセージなど、同じ季節に咲く他の花と相似した花を持っており、このランは受粉されても密を報酬としては与えない。

 このランの丘ではそれ以外に、アナカンティス・コリーナとオフリス・アムビリカッタを見ることも出来る。この場所のメイントレイルは、散策用とサイクリングロードの「丘を保護するトレイル」となっていて、ネス・ツィヨナのハカルクールの丘通りとハシルヨン通りの交差点から辿り着ける。丘は印が付いていない多くのトレイルで結ばれている。

●ラモットの森:5種類のアナカンティス

 ラモットの森は、エルサレム山脈のミツペー・ナフトアハの丘の斜面にある。殆どの部分は、ユダヤ民族基金によって植樹された松と杉で覆われているが、ピスタシア・アトランティカ、クラタエグス・アザロルス(サンザシ)、ピスタシア・パラエスティナや樫の木などの野生樹木もある。森のオープンフィールドには豊富な花があり、保護しなければならない特殊で重要な種類と定義された96種類が確認され、その中に11種類のランがある。アナカムティス・ピラミダリス、オフリス・フシフローラ、オフリス・アムビリカッタ、オフリス・スフェゴデス、オフリス・ルテア、オフリス・フレイスケマニー、オルキス・アナトリカ、オルキス・ガリラエア、アナカンプティス・パピリオナケア、ネオティネア・トリデンタタとクゲヌマランだ。

 ラモットの森では円周トレイルが2コース印付けられており、ミツペー・ナフトアハ・トレイル(黒色1.5km)とハツバイーム・トレイル(赤色2.5km)がある。開始地点と終了支店は両者ともハキポード公園だ。

●マスレク自然保護地区:リモドルム・アボーティヴムとオフリス・フシフローラ

 マスレクは小さな自然保護地区で、エルサレム山脈で117エーカーの面積しかない。この場所では地中海林が保存されており、この季節には2種類の希少なランが咲いている。紫色の花を持ち、有機腐敗物質から摂食するリモドルム・アボーティヴムと、茶色、黄色と紫色の綺麗な花を咲かせるオフリス・フシフローラだ。自然保護地区には約900mの短いトレイルがある。

◎南部

●ポレー自然保護地区:数十種類の希少なラン密生地

 シクマ川の川岸に近いポレー自然保護地区に余り人が訪れない地域があり、そこにアナカンプティス・パピリオナケアの数十種類の希少な密生地がある。自然公園局では、この地域での火災の結果として密生地ができ、ランにとっては良かったようだと説明している。今年の開花は、数百のランが密生していた去年よりかは少ないが、それでもとても美しい。

 このランの密生地に辿り着くには、232号線からブロール・ヒルに向かって数百メートル東へ行き、シクマ川の西岸にある「シクマ・トレイル」を上っていく。マルシャン遺跡まで東へ進み、その道に沿って東へ上っていく。マルシャン遺跡の南東約1kmの所、道の西側に密生地がある。車は道に止めて、そこから密生地まで約70m歩く。

●ルハマ・バッドランズとバリー:オフリス・アムビリカッタとアナカンプティス・コリーナ

 「ドゥローム・アドム」だけではない。ルハマ・バッドランズとバリーの森は、季節になると真っ赤なカーペットとなるアネモネの開花で主に有名だが、これらの場所にもランが豊富に咲いている。主にオフリス・アムビリカッタとアナカンプティス・コリーナだ。

 余り遠くまで歩きたくない人は、バリー・バッドランズ自然保護地区に行き、バッドランズ展望台から「クレーター」まで下りて行き、黒と青色のトレイルに沿ってちょっと散策して車に戻って来る。又は長いトレイル(4km)もあり約2時間かかる。「クレーター」まで下り、その後青色トレイルでサハフ川への下り、ナハビール(旧バリー)まで行く。この場合にはトレイルの終点に拾ってもらう車を用意すること。ランはルハマ・バッドランズとグママ遺跡(エル・ジャママ)で見ることが出来る。

●エズリカムの林:アナカンプティス・パピリオナケアとアナカンティス・サンクタ

 べエル・トビヤの森にあるエズリカムの林は、べエル・トビヤとエズリカム村の間にある。中央部付近ではあるが、一般市民にとってはとても僻地にある林であり、ここを訪問する数も少ない。林では冬と春に美しい開花が見られ、この季節ではアナカンプティス・パピリオナケアとオフリス・アムビリカッタを見ることが出来る。夏になるとアナカムティス・サンクタとも出会える。

 3号線をキリヤット・マラヒに向かって走り、3703号線(イーガル・ホロビッツ通り)を西へ曲がってエズリカム村へ向かう。オーロット村とべエル・トビヤの入口を通過し、約4.5km行くと交差点に到着する。そこを直進してエズリカム村に向かった約400m先に林への入口が右側にある。林の中の道を車で行き、自由に散策することが出来る。

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