パレスチナ総選挙:何故今なのか

 アメリカ大統領選の時期、ラマッラの政治マップに熟知しているパレスチナ関係者と、トランプ政権が継続される場合、又は民主党が勝った場合のパレスチナ当局の動向に関して話し合ってみた。「もしバイデンが勝つならば、パレスチナ当局は総選挙に行くだろう」と彼は確信して言った。

 彼の予想には驚かされた、というのもトランプ政権が勝ってパレスチナの孤立化が継続するならば、ハマスと手を組んでイスラエルとアメリカに対抗する選挙に出ると考えていた。「アメリカの民主党には、民主主義の印を見せるのが重要だ」と彼は語った。「その後のパレスチナ上層部を再合法化するために、アブマゼンが総選挙に出るよう圧力をかけるだろう」。

 先日アブマゼンは、パレスチナ人議会である立法評議会(5月)と、その後に続いて大統領選(7月)に関する段階的な選挙の大統領命令を出した。最後にPLO議会でもあるパレスチナ国民評議会の選挙も行われる。この計画が実施されるならば、パレスチナ当局で実施された最後の総選挙から15年ぶりとなる。この間に西岸地区の地方自治体選挙しか行われておらず、これもハマスがボイコットした為に、主にファタハ・メンバーだけが争った。

 パレスチナ人評議会はここ長年活動停止しており、これも最後の総選挙でハマスが予想を上回って132議席中76議席を獲得し、これに対してファタハは43議席しか獲得できなかった。その他の議席は小さい政党に分けられた。ハマスがとても適応した現場での政治活動の結果得られた勝利であり、これに対してファタハの候補者達は、各自のエゴのむき出しや仲間同士の争いを展開し、同組織への得票を分裂させてしまった。またハマスが得た一部の票は、パレスチナ当局の汚職を批判する意思表示でもあった。

 アブマゼンが何故この重要な決定を今下したのかに対する明確な答えは無いが、アメリカの政権交代が影響をしていると思われる。関係者が語ったように、パレスチナ人は両者間の接触が開始する前に、民主主義という部分を見せたいのであろう。また今回の急な総選挙の発表には、ここ数週間の国際社会とアラブ諸国の圧力もあり、ガザ地区の誰にも依存しない外部監査への干渉も含まれている。三つ目の理由としては、ファタハが要求した段階的ではなく同時に大統領選と議会選を行うという、以前のハマスの重要な要求を取り下げた事でもある。ハマスが段階的選挙に同意したことにより、アブマゼンには総選挙実施を拒否する理由が無くなったのである。

 総選挙公表からパレスチナ人評議会の議席争いまで4カ月間の時間がある。この期間には様々なことが発生して選挙中止になる恐れもある。ファタハとハマスの間には不信感という大きな亀裂が生じており、ラマッラでもガザでも総選挙を中止にする言い訳をいつも探していると考えている者も多い。どんな言い訳があるか、一つにはガザでの選挙の透明性に関するファタハとハマスの議論であろう。

 もう一つ考えられるのは、西岸地区とガザ地区でのコロナ禍で選挙実施が困難となり、楽観的に見ても西岸地区でのワクチン接種は3月から開始され、ガザではいまだワクチン受取の日付さえ決まっていない。

 しかし総選挙中止の責任として最大の挑戦者はイスラエルであり、政府が東エルサレムでのパレスチナ選挙の実施を許可するかどうかだ。2006年には東エルサレムの投票を許可したが、当時と現在の状況は全く異なっている。イスラエルでも政治危機が継続しており、イスラエルの首都でパレスチナ人投票を市民が賛成するとは思えない。これに対してパレスチナ人は、もしイスラエルが東エルサレムでの投票を許可しない場合には奥の手があると主張している。

 もし東エルサレムでの投票が実現するならば、イスラエルでの権力者達はこの選挙が自分達にとっても肯定的な結果となるかも知れず、それを阻止しない方が良いかもしれない。パレスチナ大統領選は、中期的に見てもアブマゼン後の相続争いを阻止し、西岸地区の状況が不安定となる闘争を排除し、より明確な組織化を構築させることとなる。

 同時にパレスチナ人評議会選挙は、パレスチナ当局が必要としている若い新人が選ばれる可能性もある。新しい意見や人物が、パレスチナ当局を新しい政策へと導き、地域と国際政治システムに新鮮な観点をもたらしてくれるであろう。

 ファタハやハマスだけがやる気を出しているのではなく、政治リングへ戻ろうと待機している他の関係者達もいる。その一人はアブマゼンの最強の敵であるムハマッド・ダフランで、パレスチナ当局からUAEへ追放されている。ダフランは自分のメンバーを通じ、ファタハか個人枠で立法評議会選挙への参加意向を表明した。

 現段階ではダフラン自身が立候補するかは明確ではない。もしかするとアブマゼンが選挙委員会会長を通じ、前科が無い者だけが立候補してよいという宣言をすることにより、既にダフランの立候補資格をはく奪しているかもしれず、ダフランは数百万ドル横領の罪でラマッラ裁判所で有罪判決となっている。しかしダフランは自身が参加しなくとも、自分の支持者達の政党を推し進めることは可能だ。

 もう一人政治界に戻る可能性があるのはマルアン・バルグッティで、ここ数年間アブマゼンとの関係は冷却化している。人生の殆どをイスラエルの刑務所で過ごしているバルグッティは、大統領選に立候補するかも知れない。もしアンケート調査が信頼できるならば、彼の可能性は悪くない。しかし過去の選挙で彼に対する市民の支援は皆無に等しかったことが証明されている。例を挙げれば、彼が数年前に扇動した囚人たちのハンガーストライキは、パレスチナ人の支援デモという形での市民後援を全く得られなかった。

 ハマスは大統領選で自身の立候補者を立てることに急いでいない。ハマスはアブマゼン、ダフラン、バルグッティやその他の立候補者達が、相互の立場を弱める内部争いをそのまま静観しているかもしれない。ハマスでは、ハマス派の大統領がパレスチナ当局を治めることをイスラエルが認めないことは理解しており、それによってパレスチナ人が隔離され、弱体化し、もしかすると崩壊するかも知れないという歴史的な責任をハマスが負うという事は考えてもいないからだ。

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