エルサレムのコーシェル認定シェフレストラン、クレイブ・レストランのメニューには、既に4年間子羊の胸肉ストリップの料理が掲載されている。これらのストリップ肉は、レストランのキッチンで塩と香辛料漬け、その後スモーキングと1週間以上必要な長いプロセスを通る。このポピュラーな料理は、同店で「ベーコン」という名前が与えられ、前菜やハンバーガーの添え物として提供されている。
長い年月をかけてこの料理は同店の自慢料理となった。顧客は舌鼓を打ち、シェフはこの触感と味が自慢で、今後も長期間レストランのメニューとして掲げられる予定であったが、去年12月のコロナ禍のピーク時に、エルサレムのユダヤ教ラビ議会コーシェル課から料理の名前を変更する要求が来た。
「レストランを開店した時に、良いエネルギーを顧客がもらえる場所を提供したかった」とオーナーの一人であるヨニー氏は語った。「その為には良い食材、食べ物に注入する良いエネルギーなどの要素が必要となる。自分達の料理にはとても気を遣っており、簡単に食事を準備する方法もあることを知っているが、しかし他の方法では美味しい食事は提供できない。我々はプロセスの高いレベルを維持することにとても頑固である」と語った。
「去年の12月に、全国の殆どのレストランのように我々のレストランもコロナ禍でデリバリーの運営をしていたが、コーシェル監視の責任監視員がやってきて、我々のレストランが”ベーコン”という名前を使用していることが判明し、顧客がコーシェル認定子羊ベーコンと豚のベーコンとを勘違いしないように、コーシェル認定状を受けたレストランではこの名前の使用禁止を決定したと伝えられた。自分は信者であるしパートナも信者であり、このコーシェル認定はとても重要なものである。いつもユダヤ教ラビ議会とは協力し、一度も意見の相違は無かった」。
「コーシェルではないベーコンを食べた人達は、我々のベーコンの方が美味しいと言ってくれる。顧客はコーシェル・レストランだと知っているので、この食材は何かと聞いて来るし、この肉が通る複雑なプロセスに関して我々もちゃんと説明している。エルサレムユダヤ教ラビ議会から厳格コーシェル認定状を受けており、厳格なユダヤ教徒以外は皆ここで食べているし、誰にもこの名前は邪魔にはならない。子羊ベーコンはグルメと考えられており、食に通な人達はこの料理を探しているくらいだ」。
「監視員には、ベーコンというのは豚を示すのではなく、肉の熟成、塩漬けとスモーキングのプロセスを示すものだと説明した。ベーコンと豚という名前の関連性が存在しているが、我々にとってのベーコンは準備プロセスという意味だけだ。今日世界には豚ではないベーコン製品も数多く存在し、アヒル、七面鳥、大豆ベーコンでさえある。監視員にはこれは料理プロセスの名前である為に、この名前を変えたくないと説明した。コーシェルに見えないコーシェル料理を提供しようという意思は全くない。我々は美味しい料理を提供したいだけだ」。
「我々の料理はベーコンをベースとしたアメリカン・キッチンに相似している。子羊胸肉を1週間塩と香辛料に漬け、スモーキングを数時間かけた後に油で炒めて提供している料理だ。沢山の時間を要求する複雑なプロセスだ。ラビを説得する為に合うことをお願いし、その会合では豚ではない様々なベーコン製品を見せた。多くのコーシェル・ベーコン製品を認定している、アメリカの正統派ユダヤ教ラビ組合の書類も見せた。しかし何もラビを説得することは出来なかった」。
「ラビが言うには顧客が混乱し、豚を提供していると思わせる恐れがある限り、この名前を使用することは禁止だと言われた。ラビは教えに沿って実行する義務があり、教えの中には多大な汚れがある物や、多大な汚れを思い起こす物からは遠ざかる必要がある習慣があり、食べ物自体に関係していないと言われた。我々はユダヤ教ラビ議会を敵と見ておらず、コーシェル認定状はとても重要であるが、このケースではとても傷つけられた」。
「認定状を取り上げるという明確な形では言われなかったが、我々はこのように行う義務がある絶対的な要求として提示された。最終的にラビは名前をフェイコンと変えることに同意したが、これはとても我々には心が痛く、真面目なシェフ・レストランとして自分自身を考えていることにとても迷惑でもある。料理を描写している言葉が使用できないことに傷つき、この過程に我々が注入しているエネルギーや努力を傷つけるものであり、我々を侮辱している。認定状に依存している我々は、ユダヤ教ラビ議会と喧嘩することも出来ないし、その意欲も無く、この決定を受け入れるしかなかった」。
「メニューにはチーズバーガーも掲載されており、その隣にはビーガン・チーズと併記されているが、その追記は全く邪魔にはならない、何故なら乳製品のチーズではないことを明確にしているからだ。ベーコンに関してはとても重要で、何故ならキッチンでこの長いプロセスを我々が行っているという事を顧客に理解して欲しいからだ」。
「一番ポピュラーであったメニューの名前を変更した為に、顧客は何が起きたのか質問してくる。メニューの名前の変更を強制された時に我々がした顔のように、顧客もその理由を聞いて同じ渋い顔をする。顧客の殆どがコーシェルを守っており、グルメ・レストランだと理解してくれているから、少々高くても買いに来てくれる」。
「名前が変わって売り上げに影響が出てはいないが、経済的な理由ではなく、これはレストランの本質に関係したことで、ベーコンという観念が我々のレストランの重要な要素である。この名前がメニューに掲載されることがレストランの本気度を示している、それを強制的に変えさせられたことに傷ついており、他の名前で表現できるものではない」と語った。
もともとベーコンは豚肉料理であり、新しいレストランでは用語の問題、違う食材にオリジナルの名前を使用するという事であり、例えばカルパッチョ(オリジナルは豚肉)、又はコンフィー(オリジナルはガチョウ)である。このようにレストランのメニューには、例えばビート・カルパッチョやガーリック・コンフィーなどが掲載されているが、オリジナルとは全く違う食材である。
これはクレイブ・レストランだけの問題ではない。他の多くのコーシェル認定レストランでも子羊の肉をベーコンという名前で使用している。バーガーキングでも2年前に子羊ベーコンが入った新しいハンバーガーにも、メニューでこの名前を使用している。
エルサレム宗教議会議長のイェホシュア氏のコメント:「他の理解があろうとも、豚料理(ベーコン)を含んだメニューに対し、コーシェル認定状をユダヤ教ラビ議会が出すのは滑稽であり、その為に名前の変更を依頼し、もし違う名前があるならばそれを提示してくれればいい。しかしメディアを通じてオーナーと会話する意思は全くない」。