キリスト教に関して知らない10の事

 悪いことが起きないように木を叩く?成功を祈って指を交差する?「地の塩」や「町に預言者はいない」という諺を使う?これらはユダヤ教の世界に浸透した、キリスト教の影響の氷山の一角だ。キリスト教の世界で「イエスの割礼祭」をお祝いしている今日、世界で最初のキリスト教徒であったユダヤ人賢者の事を学ぶのにふさわしい日でもある。

1.イエスという名

 ユダヤ人達が「イェシュア」と呼ばずに「イェシュー」と呼ぶことを嫌うキリスト教徒が多々いる。ユダヤ教徒達のメディアでは「イェシュー」と記されており、「彼の名と記憶が消されるように」という意味の頭文字でもあるが、「イェシュー」(実際には”ナザレのイェシュー”)とはタルムードにも何度か出ており、頭文字の意味を持ったのはずっと後の話である。

 イスラエル栄誉賞受賞者のダビデ教授は古代キリスト教研究の専門家で、ガリラヤのナザレで育ち、「イェフォシュア」の名前から生まれたイェシュアと呼ばれたイエスの事を「イェシュー」という本で説明している。当時ガリラヤの住民達はアインという喉から発声させる音を出せず、その為にイェシューという名前で彼を呼び、エズラ記でも「シオンへの帰還」リストに何度も「イェシュア」という名前が出てくる。

2.イエスの割礼祭

 キリスト教の伝承では12月25日にイエスが生まれたために「降誕祭」と呼ばれている。そこから8日目が1月1日で、新年祭をお祝いすることとなる。ただしキリスト教の世界ではこの日を「イエスの割礼祭」と呼んでいる。そう、良きユダヤ人として8日目に割礼を受けてた為にその呼称となったのだ。

 グーグルばかり読んでいると1月1日はイエスと関係なく、ユリウス皇帝がユリウス暦を紀元前45年に作成したもので、イエスの生まれる前であったという事が書いてあるはずだ。ただ当時のユリウス暦には10カ月間しかなく、1年の始まりは3月であった。1月と2月はユリウス暦に紀元前7年に追加されたものである。しかし我々は今日ユリウス暦を使用せず、1582年に作成されたグレゴリアン暦を使用している。1月1日を今日のように新年と定めた最終決定は、イエスが割礼を受けたという信仰から生まれたものである。

 もう一つ。イエスが生まれる前の年代の事をキリスト教徒は「紀元前」と呼ぶが、新約聖書ではイエスはヘロデ大王(紀元前4年死去)の時代に生まれたことが記されている。つまり1月1日は、ユダヤ教の古代の習慣に沿って生まれた、キリスト教の伝承によって重要な日と変わったのだ。

3.イエスは賢い弟子で律法を守っていた

 世界ではイエスを最初のキリスト教徒とみているが、タルムードでも他のキリスト教の文献でも、彼は律法を守っていたユダヤ人の姿として描かれている。ガムラではイエスはサンヘドリン議長であったイェホシュア・ベン・ファルヒヤの弟子(しかしその行動によって追放されるが)として記されている。キリスト教の文献でもイエスは聖書の律法、又は預言者の言葉を破る意志は無いと宣言している人物として描かれている。

 イエスは聖書の最初の律法は、「イスラエルよ聞け。われわれの神、主は唯一の主である。あなたは心をつくし、力をつくして、あなたの神、主を愛さなければならない」(申命記6:4)、「あなた自身のようにあなたの隣人を愛さなければならない」(レビ記19:18)であると言っている。キリスト教の文献では、イエスの最後の晩餐であった過越し祭の前夜祭で、ワインを聖別し種無しパンを食べている。ただしもう片方ではユダヤ教習慣の全てを遵守していたのでもないようで、通常過越し祭は家族全員と喧嘩しながら食べるのに、友人や弟子達だけと何故お祝いしたのかをちゃんと説明するのは無理だからだ。

4.木を叩く習慣(タッチ・ウッド)

 西洋では悪い前兆を懸念して、木製のものを手で叩く習慣がある。この習慣を英語では「Knocking on Wood」と呼び、ヘブライ語では「タッチ・ウッド」と呼ぶ。木と運との関係とは何か?イエスはT字型に組まれた二本の木に釘付けされて亡くなった。しかしもう一方では、もしこのことが起源となっているならば、木を叩くことが何故幸運を招くのか余計に不明瞭となる。

 一部の研究者達はその習慣は異教からで、丸太に触れるとそこに隠れている霊を呼び寄せると信じられてきたと主張している。どちらにせよイスラエルではイギリスのように、タッチ・ウッドと呼んでいる。

 19世紀にはイギリスで、「Tiggy Touchwood」と呼ばれる鬼ごっこがあった。捕まらないようにするには、逃げる側が木や木製の物体に触れていればセーフというルールであった。そこからこの習慣が生まれ、木に触れることで守られるという事になったようだ。つまりキリスト教や異教の習慣とは関係無いが、不合理な行動の繰り返しというのは運がない証拠なのかも知れない。

5.クロス・フィンガー

 トルコ代表サッカーチームのキーパーのロッショー氏がコロナにかかり、同じチームで戦ったイスラエル人プレイヤーのハイム・レビボ氏が、「ロッショーの為にクロス・フィンガーをし、早く回復することを祈る」と語った。この表現は英語の「Crossed Fingers」の変化で、「指を十字にする」という意味である。中指を人差し指の上に重ねて置く二本の指の組み合わせによるゼスチャーで、指で十字架を作ることとなる。

 前述のタッチ・ウッドと同様に昔のキリスト教徒達は、木製の十字架のネックレスを首からぶら下げていた。何か怖いことがあると十字架に触れるか、それを反射的に叩いた。時と共に男性はネックレスを付けなくなり、小さい木製の十字架も首にぶら下げないようになったので、もし幸運が必要と感じる時には指で十字架の形を作っていた。

 なのでもしあなたがキリスト教徒でないならば、「クロス・フィンガー」と言ったり、指で十字架の形にするゼスチャーは、もしかすると不幸にはならないかも知れないけれど、幸運をもたらすかは大きな疑問である。

6.シルベスターは反ユダヤ主義ではない

 1990年代の旧ソ連からの帰還者達は、「ノビ・グッド」と呼ばれているシルベスター祭を怖がる理由は無いとユダヤ教徒達に説明しようとしており、これは本当にキリスト教の祭日ではなく、アメリカの「感謝祭」のような市民祭である。

 順序良く説明すると、殆どの西洋諸国では新年が始まる夜中を「New Year's Eve」と呼ぶが、スコットランドでは「Hogmanay」、スペインでは「Nochevieja」と呼んでいる。「シルベスター」という名称は、中央ヨーロッパに主に存在しており、例としてドイツでは一年の365日には毎日聖人が定められている。

 教会では12月31日をシルベスターの日と定め、4世紀に存命していたシルベスター教皇を記念した日である。ただし彼はユダヤ人を弾圧して有名になったのではない。ユダヤ教徒達はシルベスターの夜をお祝いしないように気を付けているが、ユダヤ教ではクリスマス・イブに聖書を勉強しない習慣だけがある。

 この習慣はイーディッシュ語で「ニテル・ナフト」(又は「ライル・ニテル」又は「ニテル」又はブラインダ・ナフト。意味は「盲目の夜」)と呼ばれ、イエスが生まれたという理由で日没から夜中の零時まで聖書の勉強が禁止されている。これには3つの理由がある。一つ目は実用的で、ヨーロッパでのクリスマス・イブは迫害が多発し、ユダヤ教徒は自宅に残る方が安全であった。実際に離散していたユダヤ人の間では、この日は終日隣人の異邦人とは商売することも禁止されていた日となっていた。

 二つ目は神秘的だが、聖書の勉強は世界の聖別に関したことが多く、この日の夜は最も汚れた力が蔓延している日とされていた。汚れた力が聖書の学びの障害となり、またイエスを信じるように邪悪的な力を発揮すると信じられていた。三つ目は最も合理的で、喪に服す習慣と関係している。神殿が破壊されたアブの月の9日目に聖書を勉強しないように、迫害、強制改宗などの多くの破壊をユダヤ人にもたらした宗教であるキリスト教が生まれた夜も勉強しないことになった。

7.サンタはコーラと関係ない

 アメリカ系ユダヤ人達は、サンタクロースのキャラとは太って髭を生やし、赤い服を着たおじいさんでキリスト教とは関係なく、同じ色のロゴを持っているコーラと関係していると主張しているが、さあどうだろう。

 1930年代にコーラの経営陣達は、夏が過ぎると毎年減少する売り上げを伸ばす方法を模索していた。書いた絵が写真のような現実的な作品を描くアーティスト、ハドン・ハバード・サンドブルムに助力を求め、彼は赤色に白縁の服を着た白い大きな髭を付けて太った微笑む老人が主人公の数枚の絵を用意した。おじいさんはベースが白の赤い三角帽子を被り、下には「休憩終了」と書かれ、おじいさんの手にはコーラがある。

 しかしサンドブルムが描いた絵は既に19世紀に存在しており、当時からの信仰によるとクリスマスの日に、優しいおじいさんが北のラプランドから空飛ぶカモシカにつながったソリでやってきて、キリスト教家族の良い子達にプレゼントを渡す役割があった(ユダヤ人の子供達はハヌカのプレゼントをもらう)。

8.クリスマス・ツリーはハヌキヤではない

 電気が発明される以前は、キリスト教徒はクリスマス・ツリーにはロウソクを灯していた。ハヌカ祭に相似したような感じではあるが、ユダヤ教の習慣とは全く関係がなく、異教の習慣から真似たものとなっている。12月は日が短く、日の出は遅くて日没が早く、殆ど暖かくなることもないので、古代の異教徒者達には多大な不安を生み起こした。その為に幾つかの民族では、北半球で最も一日が短い12月21日付近で夜中に焚火をすることがあった。

 火を焚くことで太陽を力づけ、参加者も暖まることが出来る。異教徒達をキリスト教へ近づけさせる為に、焚火を含んだ幾つかの彼らの習慣が取り入れられた。ただしサロンで火を焚くと火事の原因にもなったので、簡単な解決案が考案されたのが木にロウソクを灯すことだ。電球やプラスチックが発明された後は、サロンにプラスチック製の小さいクリスマス・ツリーを置き、カラフルな電球を巻き付け、沢山の不安を取り除くことが出来るようになった。

9.教会とモスクの違い

 マクペラの洞窟は既に1千年以上もイスラム教徒の祈祷モスクとして使用されており、ユダヤ人も同じ場所で祈ってきた。それに反してユダヤ教信者やユダヤ教徒達の殆どは教会を訪問することをしない。その理由はイスラム教はユダヤ教のように一つの神を信仰しており、キリスト教は「三位一体説」(父と子と聖霊)を信仰しているからだ。

 ユダヤ教によると、唯一の神を信じないものは背信者であり、律法によっても偶像崇拝の場所を訪問することは禁止されている。またキリスト教が生まれて以来、十字軍の遠征や強制改宗などが起きた後に、律法を守っている者達の中でキリスト教とキリスト教の祭日に恐怖を抱く者が多くなり、祭日に迫害や殺害が多発した為に教会が彼らにとってとても深い可能性を持った脅威となった。

10.「地の塩」と「白い煙」

 ユダヤ教の聖典から諺を引用するユダヤ教の習慣と同様に、キリスト教徒達も新約聖書から引用することが好きである。驚くことにラビ達も含めて多くのユダヤ人達が、新約聖書から引用している諺を知らずに使用していることが多々ある。幾つかの例だが:

「あなたが言った」:ローマ総督にイエスが答えた賢い回答から引用されている。「お前はユダヤの王か?」の質問に対し、イエスの「あなたがそう言った」という回答は、イエスの謙虚さと誠実さを表しているとキリスト教徒達は主張している。

「地の塩」:新約聖書でイエスの弟子達への呼称。

「町に預言者はいない」:預言者エリヤがシドンへ行った時に、その町でエリヤを敬わなかったことを描写したイエスの言葉。

「私に賛成していない者は反対者」:マタイによる福音書の聖句。「私と共にいない者は私に反対している者だ」。

「羊の皮を被った狼」:無垢な外観を装った危険な人への呼称で、これもマタイによる福音書から。「偽預言者には気を付けよ、彼らは羊の皮を被って来るが、肉を食らう狼である」。

「石の上に他の石を残さない」:これもマタイによる福音書。「石の上に他の石が残らない日が来るであろう」。

「信じる者は幸いだ」:ユダヤ教では信仰心を謳っているのに対し、ヨハネの福音書には「見ないで信ずる者は幸いである」と記されている。

「笛に踊らされる」:ハムリンの笛吹きとは関係なく、これもイエスの言葉から。「我々は笛を吹いたのに、あなたがたは踊らなかった」。

「白い煙が出るまで」:新約聖書からの引用ではないが、100%キリスト教の諺である。教皇が亡くなった時に枢機卿が集まって次の教皇を選出する。もし3分の2以上の候補者が見つからない場合には、投票紙を焼いて失敗したことを示す黒い煙が煙突から上る。もし次の教皇が決定したならば、煙突から白い煙が出るようになっている。イスラエル国会の「ユダヤ・ハウス」政党の議員だった者が、「白い煙が出るまで」会議を続けるとメディアに伝えた時は滑稽であった。

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