イスラエルに対する「戦争犯罪」を調査?

 イスラエルでは、昨夜(金曜日)ハーグ国際刑事裁判所で開かれた、イスラエル国とハマス・テロ組織に対する同裁判所の主任検事ファトー氏への調査開始のゴーサインとなる、事前裁判構成の決定に関して驚いていない。どのような「戦争犯罪」であり、この決定の意味とイスラエルが懸念すべき点は?

 ファトー検事によると2014年「ツック・エイタン」作戦時に、イスラエル及びハマスとパレスチナ武装集団組織が戦争犯罪を行ったとのこと。どのような戦争犯罪であるかの詳細には触れていないが、実際に起きた「信用できる合理的な証拠」があると何度も主張している。

 イスラエルに関する調査によると、イスラエル軍が最低でも3回の戦闘時に「不公平な攻撃」を行ったと記述している。これに反しハマスとパレスチナ武装グループは、イスラエル市民に対するロケット発射や、民間人を人間の盾にして利用したという事で戦争犯罪を行ったと追記している。またハマスは容疑者の公平な裁判への権利を略奪し、これは2014年の戦闘中にスパイ容疑者達が、ハマスによって公開処刑されたことに関したことと思われる。

 検事は2018年の3月から開始した「帰還マーチ」のデモ枠内で、デモ中のパレスチナ人に対して、又はガザとの国境フェンス付近で暴動を起こしたパレスチナ人に対してイスラエル軍が発砲した事件の調査にも興味を示していると伝えている。また検事は、イスラエル政治家達によって推進され、戦争犯罪と彼女が定義する入植地の建設に、2014年6月から開始された西岸地区へのイスラエル人人口移動が関与していると言及している。

 同裁判所は自身の決定に於いて、戦争犯罪に関する調査の実施が行われる管轄権の制限を決めており、東エルサレムとガザ地区を含む1967年を「パレスチナ」国境として定義した主任検事自身の決定に同意した形となっている。同裁判所は、パレスチナは同裁判所のメンバー国であると大多数で決定したが、パレスチナは国として認可されていないというイスラエルや他の国々が主張している背景もあり、裁判所にはこの事項に関与する権限はない。

 昨夜裁判官達が決定した決定は管轄権の問題に関してのみで、つまり裁判所に西岸地区とガザ地区の決定を下す権限があるかという事だ。裁判所は検事に対して権限があると回答し、次の段階は検事が調査を実施するか否かを決定することとなる。

 今回の決定は3人の裁判官、ピーター・キューバックス氏、マーク・フリヨン氏とレイナ・アルフィニナンソー氏で、2対1で可決された。外務省と法務省では、今回の決定は下級裁判所で受理されており、最も基本的な事柄としてこのケースの管轄権は無いという見解を持っている、キューバックス裁判長の少数の反対派もいると伝えている。

 イスラエルの関係筋によると、今回の決定後にも様々な事柄への権利に関する事項が残っており、今回は管轄権の事項のみであるとのこと。「調査の有効な活動を推進させることに関し、検事がしなければならない道のりはまだまだ遠い」と語っている。

 イスラエルの関係筋によるとイスラエルの見解は、今回の決定は根本的に間違っており、法的な論争ではなく主に政治的な論争に依存していると説明している。「今回の決定は裁判所の委任から逸脱し、自身にとっても破壊的であり、またアブラハム合意とパレスチナ人との安全保障調整に基つき、この地域で生み出された様々な機会を危険に晒すこととなる。両者を歩み寄らせる代わりに両極へ引き離し、過激派の思うとおりになるであろう」と伝えている。

 その他にまた、裁判所が招集した主軸国7か国のうちのドイツ、オーストリア、チェコとオーストラリアは、この件に関して法的な権限は無いという見解を公式に表明している。

 ネタニヤフ首相は、国際裁判所の決定に関して公式の場で語らないよう大臣達に指示した。安息日入り後に特別に発表された首相のコメントでは、「裁判所が法的機関ではなく、政治的団体であることを再度証明した日だ。この裁判所は本来の戦争犯罪を無視し、その代わりに厳格な民主主義で法を尊重し、裁判所の加盟国ではないイスラエル国を追いかけまわしている」と伝えている。

 「今回の決定で裁判所は、民主国家がテロから自身を守る権利を損害し、平和の輪を拡大させようと努力することに反対する団体の思うとおりになっている。我々は全ての手段を用いて自国の国民と兵士を法的迫害から守り続ける」と語っている。

 ガビ外務大臣は、「国際刑事裁判所の決定は国際法を歪めており、この機関を反イスラエルキャンペーンの政治的ツールへと変えてしまっている。国際刑事裁判所にはパレスチナ人に関して論議する権利はない。イスラエル国は自身の効果的な法システムを持った民主国家であり、世界中でもそれが認められている」と述べた。

 「裁判官達の決定はパレスチナ人テロに賞を与え、イスラエルとの直接交渉に戻ることを拒否しているパレスチナ当局を、実際には両極端へと引き離していることに助力している。我々は国際裁判システムの重要性を認知しながら、政治利用に反対している世界の国々に対し、裁判所の権利に同意しない選択権が各国の主権として尊重することを呼びかける。イスラエル国は自国の市民を守るために必要な全ての手段を用いる」とも語った。

 米国務省は今回の決定に関し、米国は「非常に懸念している」と伝えている。国務省スポークスマンのネッド氏は、「決定内容を検討している」と伝えている。イスラエルはバイデン政権に対し、同裁判所の調査過程の阻止支援を要求すると予想されている。

 イスラエルを含むアメリカ同盟国、又はアフガニスタンでの活動に関するアメリカ兵士を調査し、裁判所へ訴訟する試みに関連するハーグ国際刑事裁判所の上層部関係者達に対し、経済制裁を加えることの大統領命令へ2020年6月サインしたトランプ前大統領の制裁を懸念し、裁判所はアメリカの政権交代が終わるまで待っていた。大統領命令にはハーグ国際刑事裁判所上層部関係者の資産没収や、関係者家族のアメリカ入国禁止も含まれている。

 イスラエル外務省は、金曜日の決定に関して事前通知されていなかったが、いつでもその決定が下されることはここ数カ月間分かっていた。イスラエルは正当化させないように全ての訴訟をボイコットし、裁判所の問い合わせには一切回答しなかった。その為にイスラエルは今回の決定を上訴することは出来ない。

 主任検事は今年夏に役割を終える予定で、新しい検事を選出している最中である。後任の検事の立場が、イスラエルに対する調査への影響を与えることになり、理論上ではこの調査を再検討したり、それを停止する権利もある。現段階ではイスラエル市民へのリスクや脅威は予想されていないが裁判過程が長く、もし将来裁判所で調査が開始するならば、難しいタフなシナリオになるであろう。

 今回の決定の意味は、戦争犯罪に関してイスラエルに対する調査を開始する道が敷かれたのであり、もしそれが実現するならばイスラエル政治家、様々な軍人、植民地活動推進者達などが刑事裁判に立たされ、逮捕状や出頭命令も出されるかもしれない。関係者の中には首相、大臣、参謀長官、司令官や、自治会長、植民地責任者や将校なども含まれている。

 イスラエルが裁判所をボイコットして協力しない為に、裁判所がイスラエル人に対して逮捕状を発行する懸念がある。逮捕状は、本人に令状が発行されたことを知らせずに秘密裏に出すことが出来る。逮捕状が発行されれば、裁判所の加盟国はそれに従う義務があり、逮捕者をハーグ裁判所に連行する義務がある。

 もしイスラエル上層部に対して逮捕状が発行されれば、多くの国々への渡航の可能性が制限されることとなる。今回の決定はイスラエルを特別準備させ、イスラエル政治家や将校達が海外で逮捕されないように注意する必要が出てくる。イスラエルではこの1年間で、数百人(200~300人)の調査対象者となるリストを作成している。

 裁判所には122の加盟国があり、殆どの西ヨーロッパ諸国、アメリカ大陸(アメリカを除く)、一部のアフリカやオーストラリア、日本やその他のアジア諸国がある。大臣や国家元首でも、また在職中であっても裁判所では免責は無い。

 イスラエル政府はハーグ裁判所の調査開始と争うことを可能とするツールが作成され、裁判所が調査対象にするイスラエル政治家や将校達を保護下に置く。しかし逮捕状は明日にでも出せるものではなく、数か月又は1年以上かかる過程である。「我々は、もし調査が開始して裁判所が法的迫害を実施するならば、全国民に対して完全な保護を提供する」と法務省と外務省の関係者は語った。「しかし現段階では調査も開始しておらず、この判決によって誰にも出頭命令は出ていない。もしかすると違う方向へ展開するかも知れない」とも語った。

 イスラエル上層筋では、ハーグ問題は長期間継続すると予想され、「大きな頭痛の種にはなるが、イスラエル国は無力ではなく対応する力がある」と語っている。イスラエルで語られている一番の懸念は、ハーグ刑事裁判所によって戦争犯罪として理解される入植地活動に従事する担当者や将校が恐れて「クールダウン・エフェクト」が起きることである。西岸地区に於ける入植地建設や、違法建築物破壊、土地没収などの責任者としての地位に誰も就かなくなる恐れがある。

 前外務省顧問で公共国家問題エルサレムセンターの公共外交研究所所長エラン・ベイカー氏(国際裁判所の憲法起草のイスラエル使節団メンバー)は、国際裁判所の決定へのコメントとして、「ホロコースト虐殺行為後に国際司法裁判所を独立機関として設置するというビジョンの創設者の一人であるイスラエル国が、現在パレスチナの政治的操作を基本とした裁判所の標的になっていることは悲劇的で皮肉なことである」と語った。

 同氏によると、検事によって行われた法的な曲芸は、政治的で偏見から生じており、パレスチナ当局に国家と主権の要素を与えるという皮肉であると伝えた。「全ての国際基準に従うと、パレスチナ当局は主権を持った存在ではなく、国際裁判所国際法によると、同裁判所の管轄下に無い者である」とも伝えている。

 「国際裁判所は非政治的な裁判所で政治的な影響や圧力下にあってはいけないものであるが、今回の決定で反イスラエルの機関となり、イスラエル国の存在の正当化を否定する者達のツールと変わってしまった。残念ながら今回の決定は、国際司法裁判所自身の完全性と信頼性への不可逆的なダメージを与えることになり、中東における和平政策を訴えて中止させるポテンシャルさえある」とも伝えている。

 パレスチナ首相のムハマッド氏は、国際司法裁判所の決定を祝福し、「イスラエル犯罪の犠牲者への勝利」と語った。また過去3回に渡るガザ地区での「イスラエルの犯罪」、囚人問題や入植地問題を直ちに調査するよう裁判所へ呼びかけている。

 パレスチナ外務大臣のリアッド氏も、パレスチナ当局を加盟国として認知した国際裁判所の決定を祝福し、主任検事に対し「パレスチナ民族に対する犯罪」に関して直ちにイスラエル政治家達に刑事調査を開始するよう呼びかけた。パレスチナ当局上層部のフセイン氏は、「国際裁判所の決定は、パレスチナ当局をローマ条約に沿って加盟国として認可した真実、正義、自由と全世界の人道的価値への勝利である」と語っている。

 パレスチナ人は2015年にローマ条約に加入し、ハーグ国際刑事裁判所での活動が可能となった。その加入によってイスラエルに対する調査推進プロセスを企画することが可能となった。ネタニヤフ首相はパレスチナ人の行動に関し、パレスチナ当局への送金を停止する罰で対応していた。

 ハマスでは当初、イスラエルに対する戦争犯罪に関与しているテロ組織として自身が関連する国際裁判所の決定に関しては語ろうとしなかったが、その後決定を祝福する声明を発表した。「パレスチナ民族の権利を支援する国際決定の全てと、民族の自由を守ることは人権保護の決定である。パレスチナ民族は、パレスチナ民族に対して行われた犯罪に関し、支配者達とそのリーダー達が裁判へ連行される日が来ることを待ち望んでいる。我々は、パレスチナ民族に対するイスラエルの犯罪と制度化されたテロを阻止する為に、あらゆる手段を使用することを呼びかける」とハマスでは伝えている。

 安息日明けのネタニヤフ首相のコメントは、「純粋な反ユダヤ主義だ。この裁判所は、ユダヤ民族に対するナチのホロコーストのような悲劇を防止する為に設置されたもので、現在はユダヤ民族唯一の国を攻撃している。この意図的な裁判所は、中東で唯一の民主国家に対して妄想的な罪を擦り付けてはいるが、毎日イランやシリアのような残酷な独裁者が行っている本当の戦争犯罪を調査することは拒否している」と伝えている。

最新記事

すべて表示

エルサレムで衝突の夜:数千人のパレスチナ人が暴動、数十人の警察官が神殿の丘に突入

ラマダンの断食終了後に、神殿の丘とシェイフ・ジャラフ居住地で暴動が発生した。数十人の特殊パトロール部隊警察官達がエルアクサ寺院の広場に突入し、ショックグレネードで数千人のパレスチナ人達を解散させた。パレスチナ側の主張では、警察官が神殿の丘に突入した後に暴動が開始し、警察側では現場で暴動が起きたために突入したと主張しているが、祈祷場所へ部隊を突入させた理由は述べていないとしている。 激しい衝突は幾つ

パレスチナ人に寄付された数百万ユーロが「人民戦線」テロ活動に使用

イスラエル治安部隊は、人道目的の為にヨーロッパの国々や組織からパレスチナ人へ寄付された数百万ユーロが、「人民戦線」組織のテロ活動に送金されたメカニズムを暴露した。今日(木曜日)の午後に発表が許可された。西岸地区のパレスチナ人4人が、詐欺の容疑者として逮捕された。 国内諜報部、イスラエル防衛軍と警察の捜査によると、ヨーロッパの政府支援機関とNPO組織が与えた寄付金が、西岸地区のパレスチナ人団体や組織

百万人に近づく:2020年度エルサレム人口95万2千人

このデータによると、過去10年間でユダヤ人女性の出産率が上昇し、エルサレムでもイスラエル全国でも同様で、それに反してアラブ人女性の出産率は急激に減少している。ユダヤ人女性の平均出産率は2.9人から3.0人に上昇し、アラブ人女性の平均出産率はエルサレムで3.9人から3.2人へ減少、イスラエルでは3.5人から3.0人へ減少を記録した。 このデータによると、2019年にエルサレムへ移住した新規市民は1万