軍隊

 イスラエル市民の義務の一つとして徴兵制があります。男女とも徴兵されるというのが他の国とは大きく異なる部分かと思います。男女とも高校卒業後、18歳から男性は3年間、女性は20ヶ月いかなければなりません。徴兵されないのはイスラエルの市民権を持っているパレスチナアラブ人、前科者、精神的または肉体的に障害がある子供達です。イスラエル人にとって軍隊は自分の人生を左右する大きな要素ですので、免除された人の中には1年でもボランティア活動をすれば軍隊に行ったことと証明してくれるシステムを利用する人もいます。

 16歳で初めての召集状が届き、軍隊の出先機関で知能テストや身体テストを受けます。それによって軍隊のプロフィール(点数)が決まり、それが高いほど前線部隊や重要な部隊へ配置されます。勿論自分の希望先も聞いてくれますし、テスト結果に沿ってその人に合う部隊を紹介してくれたりしますが最終的に決めるのは軍隊であり、卒業するまでにはもうどの部隊に所属するかも決まっています。

 最後の召集状で入隊日や場所が指定され、大きな荷物を持って両親や家族とお別れします。そこから鬼軍曹に率いられて厳しい基礎訓練の基地へ連れていかれるのです。普段の生活から突然軍生活になりますし、武器も手渡されて自分の責任下に置くことになるので最初の基礎訓練はそれはそれは厳しいものです。

 武器とは怖いものとして取り扱うことを毎日のように聞かされます。武器を持っているからとて自分が強くなったと誤解してはいけない、間違って使えば他人の命を奪うことにもなり、自分の命を奪われることにもなりかねない、だから武器とは大切に責任をもって取り扱うものであるということ。ただし武器を持っているならば、必要な緊急事態では必ずそれを使用すること。緊急事態とは自分の命の危険、又は市民の命の危険がある時で、それも直ぐに発砲するのではなく、威嚇射撃などの段階を踏んでから使用しないと自分が軍法にかけられる恐れがあるということです。

 結局は自分の判断に任されるということなのですが、責任を取るということを学ばせながら成長の過程を通っているのです。兵士は皆休暇の時には必ず銃と実弾を持って自宅との間を行き来しなければなりません。自宅にいるときにもちゃんと保管し、もし盗まれるようなことがあったら自分が軍法にかけられる恐れがあります。街中には機関銃をぶら下げて歩いている兵士の姿をところどころ見かけますが、市民にとっては彼らによって自分達が守られているという安堵感がありますし、兵士も国を守ることが最優先なので武器を使った個人的な利益を求める事件は皆無です。それだけ軍の教育はしっかりしています。海外のニュースではイスラエル軍が攻撃している場面しか放送しないのでイスラエル兵士は怖いという印象がありますが、誰も好き好んで発砲はしません。発砲しなければならない状況に陥ってるということなのです。

 最初の基礎訓練時に宣誓式があり、その時に上官から聖書と武器が手渡されます。これはイザヤ書2:4に書かれているように「こうして彼らはそのつるぎを打ちかえて、すきとし、そのやりを打ちかえて、かまとし、国は国にむかって、つるぎをあげず、彼らはもはや戦いのことを学ばない」という聖句が成就するまで、同じ鉄でも今は武器を持って戦わなければならないということを意味しています。

 徴兵の期間はお小遣い程度の支払いしかありません、後方部隊で月3万円、前線部隊で4万5千円くらいです。食費、交通費、社会保険などは全て保障してくれます。基地が自宅に近ければ毎日帰宅できる兵士もいますし、遠ければ3週間に一度くらいしか帰宅できません。義務が終了すると恩給が支払われますが、後方部隊の3年間の恩給は合計60万円くらい、現金と奨励金利用制度で半々という感じです。

 女性は基本的に結婚すれば軍隊に行く必要はありません。以前のアンケートでは女性の30%はもう軍隊に行きたくないという結果もありました。本当に行きたくない子は18歳で結婚して20歳で離婚しますが、村八分にされる可能性も多々あります。男性は45歳まで毎年予備役があり、就職していようが勉強していようが必ずいかなければなりません。ただ余程の理由がある場合には延期してもらえる可能性もあります。予備役の時にはちゃんと給料を支払ってくれますので、新兵、予備兵、職業軍人の全員と考えると人件費にどれだけのお金がかかっているかも想像できると思います。

 

*数年前に日本の新聞で見つけたイスラエル軍のデータです:

兵員61万5千人

航空戦力596

戦闘機252

戦車2,760

主要艦艇65

軍事予算200億ドル

 戦力は陸海空と分かれており、最大は陸軍。国土が小さいためにイスラエルの戦争の必要条件は「敵地で素早く」というものでした。制空権がとても重要となるのでイスラエルの空軍は世界でも最強部隊と言われています。空軍のパイロットには一番優秀な人が選ばれ、パイロットの多くが現在IT会社の社長をしているエリートコースとなっています。イギリス制度の秘密主義を守っているためにパイロットの顔写真も載りませんし、名前も活字になることはありません。これはパイロットが誘拐されてアラブ諸国に空軍の機密が流れることを防ぐためでもあります。

 国内で起きているパレスチナ問題は別として、軍隊に入隊して国の為に奉仕するということ、自分の国は自分達で守るという愛国心を育むことは子供達が成長していく過程で重要な要素の一つだと思います。

 お蔭様で自分も24歳の時に召集され41歳で無事に退役しました。2006年の第二次レバノン戦争で緊急召集されたり、予備役の時にはパレスチナアラブ人から発砲されたり、爆弾を仕掛けられたり、投石を受けたりとしましたが、一度も人に対して発砲したことはありません。相手も家族を持った子供や親であり、こちらもそうそう引き金に指を入れることはできません。息子達も自分と同じように他人を傷つけることもなく無事に軍隊を終え、今は予備役に就いています。軍隊にいたからこそ他人や自分の命を尊重し、自分の国の平和の尊さを学ぶのはとても重要だと思います。早くこの地に平和が来ることを望むばかりです。

​*若かりし頃の写真

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