キブツ

 キブツとはヘブライ語で”集団”という意味があり、日本語でも集団農業と訳されています。1910年にガリラヤ湖の南端にロシア系ユダヤ人によって世界で初めてのキブツが建設され、現在イスラエルには273個のキブツがあります。全てを共有財産で共同生活をしながら相互に助け合っていく共同体、「ゆりかごから墓場まで」という言葉が実践されていたのがキブツです。

 自分も80年代の古き良き時代のキブツを経験しました。まず最初のキブツには17歳の最年少として入り、キブツにあった「ウルパン」と呼ばれるヘブライ語学校に入学し、半年間勉強と仕事を両立させながら3人部屋に共同生活していました。1日4時間の労働と4時間の勉強をちゃんとしていれば衣食住からビザまで全てキブツが世話をし、長期間の滞在なので里親までついて週末になると家族の一員のように世話をしてくれました。日本語を忘れるくらいヘブライ語を勉強させてもらい、共同生活の楽しさや遠く離れた異国の外国人達との生活で、改めて日本の良さが理解できた経験をしました。

 二つ目のキブツは19歳で3か月間ボランティアとして入り、1日6時間の労働さえしていれば全てをキブツが保障してくれました。最初のキブツと同じように3人部屋で寝泊まりし、このキブツでは英語を学ぶために選んだキブツでした。

 ヘブライ語はできたのでキブツのメンバーと話をすることはできたのですがいかんせん英語が全く耳から入らず、よりによって当時のボランティア責任者がオーストラリア人だったので英語のなまりが酷くて何が何だか全く分からず、最初の一週間は辞書と睨めっこしていました。アイルランド人と話しているときは内容の10%も分かりませんでしたね。面倒だからなんでもかんでも「イエス、イエス」と相槌を打っていたら「なんで質問に答えないんだ?」と言われて赤っ恥かいたのも覚えてます。

 でも1週間も経つと耳が鳴れてきて、ヘブライ語も話せるということで1か月後には自分がボランティア責任者になっていました。英語も日常会話は普通にできるレベルに達していましたが、各自の問題に関しては面倒な話が多かったので、わざと分からないふりをしていたら「こいつには難しい話は通用しない」ということで、そんなに大きな問題もなく役割を果たすことができました。当時のキブツには世界中から若者が集まっており、各国の性格、考え方、言葉など色々と違いが目の当たりになってとても面白い経験でした。個人的には一番相性が合わなかったのはイギリス人ですね、好かれたのは南米とかフランスでしたけど。

 キブツのお陰で世界に対する目が開かれましたし、日本の良さも理解しましたし、言葉も勉強し、与えられたことをちゃんとしていればお金の心配もないということで、一時期はキブツのメンバーになることも考えていた時がありました。ただ自分が経験したのは昔の話であり、1990年のソ連崩壊とともにキブツも崩壊していったのです。

 残念ながら昔のように自由にキブツを行き来する時代はなくなってしまい、今はシステムが変わってしまいました。それに今はキブツも食事を提供することがなくなってしまいました。それでも仕事さえしていれば寝るところとビザは保証してくれるので、もし若い人達で世界を旅行したいけれどもお金がないというような人がいれば、キブツを経験すれば世界中に友達ができますし食費以外はそんなにお金もかかりません。

35歳までという制限はありますが、まだキブツの中でもボランティアを募集しているキブツもあるので、まだ可能な間にキブツに滞在してみることをお勧めします。

 興味のある方はキブツのボランティアオフィスのHPに申請しなければなりません。

https://kibbutzvolunteers.org.il/

 オフィスから提出書類などの情報がきますので、滞在期間や期日なども事前に知らせると、先に内務省からボランティアビザを取得してくれます。ビザ取得後に入国し、テルアビブのオフィスに立ち寄って保証金($100~$200くらい)を支払うとキブツへの紹介状や行き方の説明などをしてくれます。キブツは最低2か月間の滞在を要望しています、そのための保証金でありもし2か月以内に離れてしまう時には保証金は返金されず、それを満たすならばこの保証金も返金されます。

 キブツの仕事内容は各自の能力に合った仕事というのが基本ですが、レストランなどを経営しているキブツではまかないも出るので一部食費が浮く形になります。また一応キブツも食費代を出してはくれますが、とても3食も買える金額ではありません。食費以外にキブツに入る前、乃至は出た後でも国内旅行ができるので、その時に必要な旅費なども準備しておくといいでしょう。

 基本的にキブツは強制はしませんので、もし入ったキブツが合わないようでしたらそこにずっと残る必要もありません。逆に気に入るようでしたらビザが許す限り滞在することも可能です。

 最低でも英語は話せないとキブツの滞在は無理です。せっかくですからそれを機に英語も話せるように準備しておけば自分のように苦労することもないと思います。全体的にキブツの中で日本人は好かれます、勤勉で真面目で時間をしっかり守るからです。

 こんな不思議な共同体は世界広しと言えどもイスラエルのキブツしかないと思います。まだまだお若い皆さん、共同生活を知る重要さ、今の自分の環境がどれだけ恵まれているかを納得できるチャンス、世界に友達ができて目も開くことができ、もしかすると国際結婚があるかもしれない自分の今後をじっくりと考える時間が与えられるような場所、それがキブツだと思います。

 興味がある方は是非試してみてください。

*21年4月17日のニュースでは、ボランティア受け入れを再開するそうです

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